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平成27年4月 社会保険労務士法改正

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社会的な要請に応えるために

近年、我が国の社会は、経済のグローバル化による企業間競争の激化や、働き方の多様化により、企業組織の再編や人事労務管理の個別化等が進んでいます。その結果、事業主と個別の労働者の間で生じるトラブル(個別労働関係紛争)が増加していますが、こうしたトラブルは労働者の生活の維持に直結する問題であり、一方で企業にとっては事業運営に大きな影響を生じることから、紛争の迅速かつ的確な解決が求められています。

 また、労働保険(労働者災害補償保険、雇用保険)、社会保険(健康保険、厚生年金保険等)の制度は、社会情勢の変化とともに複雑化し、適用や給付をめぐる国民と行政のトラブルも増加しています。

そのため、労務管理と労働社会保険制度に関する専門家である社労士に対する社会的な要請は、質、量ともに増大しています。

このような状況に対応するため、平成26年11月、社労士の業務範囲の拡大と制度の充実を図るための「社会保険労務士法の一部を改正する法律」が成立、平成27年4月から施行されます。

改正の内容は以下のとおりです。

①厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において、特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を、120万円に引き上げること。
②社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができることとすること。
③社員が一人の社会保険労務士法人の設立等を可能とすること。

職場のトラブルを簡易、迅速、円満に解決するために
個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争目的価額の上限の引上げ

1.これまでは

(1)裁判によらない解決方法
身の回りで起こる様々なもめ事やトラブルを解決する方法といえば、裁判が代表的です。それ以外にも、トラブルを解決する方法(裁判外紛争解決手続(ADR))があります。これは、民事上の紛争を、当事者と利害関係のない公正中立な第三者が、当事者双方の言い分をじっくり聴きながら、専門家としての知見を生かして、柔軟な和解解決を図るものです。一般的に、調停とか、あっせんと呼ばれています。このような紛争解決手続は、民間事業者が行っているものもあります。

(2)社労士会労働紛争解決センター
全国社会保険労務士会連合会及び都道府県社会保険労務士会は、労務管理の専門家である社労士が、職場のトラブル(解雇、賃金問題等)の当事者(労働者・事業主)双方の言い分を交互に聴きながら、話し合いによって、簡易、迅速、低廉に円満解決を図る民間の機関として、社労士会労働紛争解決センターを設立しています。

(3)特定社労士と紛争目的価額
特定社労士は、労務管理の専門家である社労士が、更に紛争解決手続代理業務を行うために必要な学識及び実務能力に関する研修を修了し、かつ、国家試験に合格したADRの専門家です。豊富な経験と知識で依頼者(労働者・事業主)に代わってADRの手続を行い、トラブルを解決します。これまでは、特定社労士が社労士会労働紛争解決センター等の民間のADR機関において依頼者の代理人となる場合、紛争の目的となっている金額が60万円を超える場合は、弁護士と「共同受任」をしなければなりませんでした。「共同受任」というのは、依頼者が弁護士と特定社労士に代理を依頼するということで、特定社労士に依頼する費用のほかに、弁護士に依頼する費用を負担しなければなりません。一方で、これまで社労士会労働紛争解決センターで取扱った事案を見ると、「給与●ヵ月分の解決金を求める」といった金銭による解決を求める事案では、その金額が60万円を超えるケースが多い状況です。このような状況が、社労士会労働紛争解決センターや特定社労士の利用を妨げていると考えられます。

3.法改正後は

 今回の社労士法改正によって、特定社労士が単独で代理できる紛争の目的価額が60万円から120万円に引上げられ、職場のトラブルに悩む労働者や事業主が、特定社労士と社労士会労働紛争解決センターを活用して、トラブルを簡易、迅速、低廉、そして円満に解決できるようになりました。

裁判の場でも信頼に応えるために
補佐人制度の創設

1.これまでは

(1)行政とのトラブル
労働保険(労働者災害補償保険、雇用保険)、社会保険(健康保険、厚生年金保険等)の制度は、社会情勢の変化とともに複雑化し、適用や給付をめぐる国民と行政のトラブルも増加しています。このようなトラブルは、労働社会保険の各法律、あるいは行政不服審査法に基づく審査請求によって解決することになりますが、これらの手続の結果に不服がある場合には裁判によって解決を図ることになります。

(2)ADRによって解決できない職場のトラブル
また、個別労働関係紛争についても、職場のトラブルを企業内で解決できず、社労士会労働紛争解決センター等のADRによっても解決できない場合は、依頼者が裁判による解決を望むこともあるかもしれません。

(3)社労士が直接関与できないことによる依頼者への負担
これまで社労士は、その業務として裁判に関与することができず、依頼者はその事案について、当初から相談していた社労士とは別に、弁護士に訴訟の代理を依頼して、紛争の経緯から自身が望む解決方法を改めて説明する必要がありました

2.法改正後は

 今般の法改正により、社労士業務の中に、労働社会保険に関する行政訴訟の場面や、個別労働関係紛争に関する民事訴訟の場面で、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができる補佐人の業務が加わりました。 これにより、依頼者は、これまで相談の段階から支援を受けてきた社労士が補佐人として弁護士とともに訴訟の対応にあたることが可能になり、安心して訴訟による解決を選択することができるようになります。