解雇

解雇理由の変更と慰謝料の支払いを求めた事例

申請の概要

申立人(労働者)X(以下「申立人X」という。)は、被申立人(事業主)Y(以下「被申立人Y」という。)の経営する病院に勤務していた。
ある時、申立人Xは被申立人Yに呼び出され、1か月後に退職してほしいと解雇を通告された。理由を確認すると、これまで申立人Xに任せていた業務を被申立人Y自身が行うこととなり、申立人Xが行うべき業務がなくなるからとのことだった。申立人Xは納得のいかないまま帰宅したものの、後日「解雇理由証明書がほしい。」と申し出た。
しかし、翌日交付された解雇理由証明書を見ると、解雇理由は「勤務態度に問題があるから。」と記載されており、更に「具体的には、院長の指示に従わなかった事例があったこと。」、「日常の業務において協調性が欠如していたこと。」、「患者の前で不適切な言動があり、不信感を招いたこと。」等と書かれていた。
申立人Xにはこれらの解雇理由に全く覚えがなく、納得できるものではなかった。申立人Xは、被申立人Yとの間に今後信頼関係を築いていくのが難しいと感じたため、職場復帰は求めないものの、自らに非があるとされた解雇理由のままでは、名誉が侵害され、再就職にも影響があると考えた。
被申立人Yは、申立人Xに対し、「解雇予告通知書」への受領サインを求めていたが、申立人Xは事実と異なる内容であるとしてサインを拒否して申立人Xは、解雇理由の訂正と自身の名誉を傷つける発言を被申立人Yがしたことに対する慰謝料として金○○万円の支払いを申立人Yに求めるべく、あっせんを申立てた。

あっせん内容

解雇理由の内容について、被申立人Yは自らの主張を変える意思はなかった。しかし、申立人Xは解雇そのものを争う姿勢は見せていないため、退職理由が解雇であることは一致していた。
そのため、最終的には解雇理由について、被申立人Yが当初説明していた「事業主都合による退職」に変更することで合意した。
あっせんで和解ができない場合のリスクがあっせん委員から被申立人Yにわかりやすく説明され、被申立人Yはそのことを理解して、慰謝料についても申立人Xの当初の請求額の一部を解決金として支払う意思があることを示し、双方が合意するに至った。

あっせん結果

以下の内容で和解契約が成立した。
被申立人Yが申立人Xに対して平成○年○月○日付で交付した解雇理由証明書の内容に齟齬があることを相互に確認するとともに、被申立人Yは申立人Xに対して、「事業主都合による退職」との解雇理由を記した解雇理由証明書を本日付で交付する。被申立人Yは、本件解決金として申立人Xに対し金○○万円を支払う。

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