年次有給休暇(年休)取得の拒否

年休の取得を申出たところ、
退職を強要され賃金相当額の補償と慰謝料を
請求した事例

申請の概要

申立人(労働者) X (以下「申立人X」という。)は、被申立人(事業主) Y(以下「被申立人Y」という。)が経営する保育園に、1年間の有期契約労働者として勤務していた。申立人Xは、他県に暮らす夫の母の介護や、県外に単身赴任中の夫に会いに行くことを理由として、年度末に5日間の年休を被申立人Yに請求した。しかし、被申立人Yは、業務多忙を理由に年休の取得を拒否し、もし休むなら欠勤扱いにする旨を申立人Xに回答した。
更に、その後、申立人Xは被申立人Yに呼び出され、繁忙期に年休を取得しようとしたとして叱責を受け、退職の勧奨を受けた。申立人Xが困惑して返答できずにいると、更に被申立人Yから誹謗中傷するような言葉で退職を迫られ、申立人Xはそれに耐え切れず、退職してもよいと言ってしまった。ただし、被申立人Yからは「自己都合退職」として退職願を提出するよう指示されていたため、申立人Xは退職願を提出できないでいた。すると、その後も申立人Xは誹謗中傷を受け、最終的に「自己都合退職」の退職願を、契約期間満了の1か月前に提出せざるを得なくなった。
そこで申立人Xは、賃金1か月分相当額と精神的苦痛に対する慰謝料として計金○○万円の支払いを被申立人Yに求めるべくあっせんを申立てた。

あっせん内容

あっせん委員は、被申立人Y に対しあっせんの趣旨を説明した上で、事実確認を行った。被申立人Yは、年休取得を拒否したことは、時季変更権の行使であり、誹謗中傷や退職を迫った事実はないとした。そのため、慰謝料については支払う意思はないが、譲歩して賃金1か月分相当額を支払いの上限としたいとのことであった。
申立人Xは、あっせんの当初は賃金1か月分相当額とは別に精神的苦痛に対する慰謝料を求めたいと主張していた。しかし、あっせん委員からたとえ年休を請求した場合でも、代わりの人が手配できない等により業務に著しい支障が出る場合には他の時季に変更できる権利(時季変更権)を事業主が有していることは法律で認められていることを聞き、一定の理解をした。申立人Xは、あっせん委員に様々な質問を行い、最終的には被申立人Yが提示した賃金1か月分相当額での和解を了承した。

あっせん結果

以下の内容で和解契約が成立した。
被申立人Yは、解決金として、申立人Xに対し金○○円を支払う。

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