調査結果レポート(公表日:2026.10.29)
社会保険労務士総合研究機構では、「社労士の日常業務と労使トラブルの未然防止等に関する実態調査」を実施しました。
以下のとおり調査レポートを公開します。
調査目的
1968(昭和43)年の社会保険労務士制度創設以降、社労士は、労働社会保険諸法令に基づく手続業務のみならず、労務管理に関する相談・助言、制度運用支援等を通じて、事業主及び労働者を支援してきた。
こうした日常業務が、社会保険労務士法第1条に定める使命規定「適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与すること」に対し、どのような役割が果たしているのかについて、可視化することが重要であるとの考えのもと、社労士が日常業務において行っている点検、相談、助言、説明、意見聴取、研修、制度運用支援等の実態を把握し、どのように関係しているかを検討することを目的として実施することとした。
概要
主な調査結果

【幅広い領域で未然防止につながる予防的関与】
●就業規則、労働契約、会社からの説明および実際の職場運用の間に相違がないかを確認したことがありますか。⇒Yes92.3%
●給与計算、勤怠記録、年次有給休暇の取得状況その他の労務データを確認する中で、長時間労働、不適切な賃金計算その他の労務上の問題を発見し、改善を働きかけたことがありますか。⇒Yes85.8%
●人事制度、評価制度、就業規則等の作成または見直しに際し、従業員アンケート、ヒアリング、意見交換等を通じて、従業員または現場の意見を把握する支援をしたことがありますか。⇒Yes71.9%
●経営者、役員、人事担当者または管理職が検討している対応について、法令違反または労使トラブルにつながるおそれがあると指摘し、対応の中止または修正を助言したことがありますか。⇒Yes85.3%
●ハラスメントまたは職場の人間関係に関する相談について、問題が深刻化する前の段階で対応または助言したことがありますか。⇒Yes65.8%
社労士による予防的な関与は、特定の業務に限定されるものではなく、法令・規程の運用確認、労働時間・賃金、人事制度、個別労務問題、職場環境という幅広い日常業務の領域で行われている。
【トラブルが顕在化・深刻化する前段階で対応】
●未払い賃金や割増賃金をめぐるトラブルを防止するため、賃金計算、固定残業代、各種手当、欠勤控除等の取扱いを確認したことがありますか。⇒
Yes85.2%
●経営者、役員、人事担当者または管理職が検討している対応について、法令違反または労使トラブルにつながるおそれがあると指摘し、対応の中止または修正を助言したことがありますか。⇒
Yes85.3%
●採用、試用期間、本採用拒否、雇止め、退職勧奨、解雇等について、認識の相違やトラブルを防ぐため、手続、説明内容または対応方法を事前に確認したことがありますか。⇒
Yes88.1%
●ハラスメントまたは職場の人間関係に関する相談について、問題が深刻化する前の段階で対応または助言したことがありますか。⇒
Yes65.8%
社労士はトラブルの発生後に対応するだけでなく、賃金、人事上の判断、採用・退職・解雇、ハラスメント等の様々な場面で、問題が顕在化・深刻化する前から確認・助言を行っている。つまり、「問題が起きてから」ではなく、「問題が起きぬよう」継続して対応している。
【早期発見・改善・認識相違の縮小等の変化を把握】
●あなたの点検、相談対応または助言を通じて、労使トラブルに発展する可能性のある問題が、深刻化する前に発見されたことがありますか。⇒
Yes46.6%
●あなたの助言または指導を契機として、法令、就業規則、労働契約等に適合していなかった取扱いや、トラブルにつながるおそれのある制度・運用が改善されたことがありますか。⇒
Yes55.7%
●あなたの説明、助言または話合いの支援により、会社と労働者との間の認識の相違が解消または縮小したことがありますか。⇒
Yes68.5%
●あなたが関与したことにより、労務上の問題が、行政機関への申告、外部の紛争解決手続、労働審判または訴訟等に至る前に、社内で解決または収束したことがありますか。⇒
Yes45.1%
●あなたが個別の労務問題に対応した後、規程、手続、管理方法、研修または相談体制が見直され、同種の問題の再発防止につながったことがありますか。⇒
Yes47.1%
●あなたの継続的な関与後に、経営者、人事担当者または管理職の対応、労使間のコミュニケーション、相談しやすさその他の労務管理・職場環境が改善したことがありますか。⇒Yes48.7%
社労士の関与後には、問題の早期発見、制度・運用の改善、労使間の認識相違の解消・縮小、社内での解決・収束、再発防止、労務管理・職場環境の改善が確認されている。特に、労使間の認識相違の解消・縮小は68.5%と最も高く、社労士の日常的な関与が、適切な労務管理だけでなく、労使間の対話・相互理解を支える役割にも関係していることがうかがえる。
社労士の日常業務そのものが、トラブルの未然防止や適切な労務管理を支える機能を保持
社労士は、労使トラブルが発生した後の対応にとどまらず、日常的な点検、相談、助言等を通じて、問題が顕在化・深刻化する前の段階から幅広く関与している実態が確認された。
また、その関与後には、問題の早期発見、制度・運用の改善、労使間の認識相違の縮小、社内での解決・収束、再発防止等の変化も把握されている。
こうした結果は、社労士の日常業務が、適切な労務管理の確立と労使トラブルの未然防止・早期解決に関係することを示しているといえる。